運営全般(組織、人員体制、予算) | 神奈川県産業技術センター
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更新日:2012.11.19

運営全般(組織、人員体制、予算)

産総研設立の目的は、神奈川県による中小企業の既存技術の高度化、独自技術の開発支援であり、具体的には、現在4本柱の事業((1)研究開発、(2)技術支援・事業化、(3)人材育成、(4)技術情報・交流)展開が進められているが、最近の社会情勢の急激な変化に対応した、県の行政システム改革の一環として、研究所のスリム化が進められ、効率化と人員削減もそれなりの成果が得られ、組織・運営全般については、よく努力されているという高い評価がえられる。

 しかし、これからも、産総研の活動を意義あるものにするためには、組織・運営などに関し、下記の諸点について疑問が残る。
(1) ビジョンと組織について:
これからの3年~5年先の具体的な活動計画・ビジョンが明確でない。組織は部制である。人をよりよく活かす組織として最適なのか。
(2) 人員体制について:
新規採用を止めている。今後の人員構成と開発活動に支障を来たさないか。
(3) 研究開発の予算・運営について:
経営的な視点からの運営がなされていない。活動費が、すべて県の予算管理システムで拘束されているため、効果的な研究開発を進めるための不可欠な、研究開発活動の迅速性と柔軟性に欠けるとともに、研究所の経営的な責任も曖昧になる。事業決算が、人件費と事業費に分離されているが、人件費も事業費の一部である。
~より良い研究所を目指して~

(1) 研究所運営の基本

 産総研は、将来的には自立したプロの技術集団として活躍することが望まれる。このためには、次の3項目を特に留意し研究所運営を行うことが望ましい。

ア 研究も企業なり -研究は個人稼業-

 研究成果は、個々の研究員による日常の努力と蓄積により得られるが、いかなる研究も経営的センスをもとに進めるべきもので、個人稼業のようなものである。大きな研究所組織を意識すべきではない。

イ 使える技術の開発・普及

 産総研における事業の柱の一つ、研究開発は、先端技術であれ、従来技術の改良であれ、使える技術の開発にある。純粋基礎研究の場ではない。使える技術の開発に徹することを、ここに改めて認識する必要がある。中小企業に役立てば良いため、必ずしも先端技術に限ったものではない事に留意することが肝要である。

ウ 研究は人

 使える技術の研究開発には、より良い人材の確保と人材の能力を活かす環境 づくりが重要である。人を失う事は、研究開発活動の終息に繋がる。

(2) 具体的な取り組み

ア 経営的センスの導入と組織改革

 研究も企業なりという研究所経営理念を前提として、経営効率を意識しながら、中小企業に対して、より充実した技術支援を進める。このために、産総研を県知事直轄とし、産総研運営の全権を機関長に委譲する。これに伴い、県庁内での関連業務を研究所で行い、徹底した組織の簡素化を計る。

 現在進めている4つの柱の事業は、各事業の収支計画を経営的視点から再構築する。この場合、事業活動成果を経営的視点に基づいた、数値的な評価法を確立する。研究所の体制も部制を廃止し、スリム化を計る。現在の部はグループとする。部長・副部長はプレイイングマネージャとして研究開発の現役にもどる。研究員はすべて所長直轄にする。

 また、これまでの県庁、研究所管理部、企画部等におけるサービス業務は、所長直轄の業務サービスグループを新設し、ここで行う。業務サービスグループは、期間雇用職員・非常勤雇用職員等を主体とし、広くOB等から求める。

イ 経営を意識した中・長期計画

 前述のア、で確立した新しい体制と経営的な運営システムを基に、これからの一般財源のさらなる減少を想定し、これからの社会変動に強い中長期経営計画・ビジョンを作成する。計画には、3年、5年、後の研究所の人員計画収支、成果予測等、数値的に示す。

 各事業活動の収支の算出において、人件費も含めた総費用(実費)を算出し、国庫プロを含め、依頼試験・受託研究等、試験研究費や技術情報提供推進事業等、個別に収支計画を作成、収支のバランスに努める。

 情報提供・技術相談等も含め、中小企業への支援は、実費・有料にする。有料で、産総研にしかない価値ある技術・情報等を提供する事が必要であろう。有料化は、プロの技術集団として産総研が自立するための一つのステップでもある。この場合、各事業の細目ごとに、研究担当者は、収支を意識した予算計画を構築し、収支の自主管理を行う。

 この場合留意すべきことは、産総研のビジョンである。

 その一つは、先端基盤技術開発である。長期的にも必要な先端的基盤技術の研究は、経常研究で行うが、経常研究は、基本的には将来への投資であろう。産総研がどの程度の比率で将来への投資を進めるのか。議論すべきであろう。プロの技術集団では、1~10%程度で、将来投資するであろう。経済情勢が悪化しても、将来投資は0にすべきではない。

 新しい研究人材の導入は、将来投資への基盤である。新規採用は、常に続ける事が基本である。

 もう一つは、県の公設機関としての位置付けである。県が中小企業にどの程度支援したいのか。支援により県の財政にどの程度の見返りを期待しているのか。原則的には、この見返りの大きさにより、産総研への一般財源からの支援が決まる。

 現時点では、産総研への県の財政的支援は、90%以上である。この比率で良いのか。今言える事は、県の財政的負担を少しでも軽くする努力が産総研に必要であろう。

 中・長期計画立案において、研究開発テーマは、基本的には、使える技術の研究開発にある。県下に多い中小製造業の支援には、生産基盤技術が重要であろう。マイクロメータ・サブミクロン・ナノメータスケールにおける、材料・デバイスの先端基盤技術は、将来的にも使われる重要な経常研究分野である。

ウ 予算体制 -研究所会計システムの構築-

 予算は、事業の大きさと事業数で決まるが、各事業投資がどの程度県下の中小企業にインパクトを与えるのか、また県にどの程度の見返りがあるのか、詳細分析してから有効な事業を予算化することであろう。

 ここでは、既存の事業を進めるとした場合について考えると、各事業の収支を明確にするためにも、研究所会計を県と別会計にし、国庫プロ・受託研究などの収入を研究所会計に入れ、収支バランスに努める。

 この場合、当面の不足分は、県の一般財源に委ねる。現在の県の機構では、人材の充実は簡単には望めないが、研究所会計システム導入を機に、機関長権限で、人材不足分を充足する新しい研究所採用システムを創設する。

 この場合、ポスドク、中途採用、企業研究者の短期雇用等、多様性のあるシステムにする。この採用システムには、不定期的な、技術支援業務等の公務を代行する非常勤のベテラン人材等が登録された産総研人材バンクも新設する。

 この新しい採用システムにより、現在停滞する産総研の人材の外部との交流をも深め、偏った年齢分布等の改善にも繋がる。

 収支計画で重要なのが、収入源の確保である。知的所有権も将来的な収入源になり、研究員の特許活動を奨励することが重要である。

 また、技術論文発表等の学術活動は、研究機関の技術レベルを外部に示す重要な手段であり、これは研究所の信用に繋がる。

 技術論文活動は、知的所有権のレベルをも高める。さらに、人材育成にも繋がる。先端技術研究においては、知的所有権と学術活動と連繋させること、これが重要である。

 地道な仕事である。研究提案も重要である。表彰制度等を充実し、若手の研究員の研究開発意欲を向上させる。実用化路線を強調しすぎて、若手の意欲を殺いではならない。

 また、施設の維持運営費が経費の30%を占めることは、問題であろう。経営資源の確保という視点から、産総研の施設の有効利用も具体化すべきであろう。会議室等の貸与システムを始め、夜間技術研修学校、夜間貸しラボシステム等各種新事業の創設も期待される。

 産総研が県内の中小製造業の公的技術支援を続けるという目的とその必要性は明確にされ、誰もが認めている。しかし、社会の変化に応じて、如何にして技術支援をするか、という事が関係者全員に与えられた課題であろう。

 ここで示した組織・運営に関する改善案は、自立したプロの研究機関を想定した、一つの理想像であろう。これからの、研究所間の競争社会を想定すると、産総研も個性を持った、競争力の強い、自立したプロの研究機関に近づくため、理想像に向けて、現状否定の立場から、できることから改革に挑戦することが肝要である。
 「千里の道もー歩から」
(和佐委員)




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