H29年度事業化促進研究の概要

概要

KISTEC 設立を機に、重点実施事業として平成 29 年4月にスタートしました。

 

目的

今後成長が期待される産業分野において、中小企業等の開発ニーズと大学等の研究シーズ(知識・ 技術等)を結び付け、さらに KISTEC が有する技術・ノウハウを活用することにより、中小企業等に よる事業化を促進し、イノベーションを創出して地域産業の振興と競争力強化を図ります。

分野

ロボット、IoT、エネルギー、先端素材、エレクトロニクス、ライフサイエンス(未病、先端医療)、 輸送用機械器具

要件(主なもの)

  • ● 研究シーズを有する大学等と開発ニーズを有する企業等の両者を含む共同研究体で申請がなされ ること
  • ● 県内に主たる事業所を有する中小企業が研究参加機関に含まれること
  • ● KISTEC が分担・協力して行える研究課題であること

スキーム

県内中小企業等、大学等とKISTECが互いにリソースを提供しながら、国等の競争的資金獲得を視野に入れ、概ね3年以内の事業化計画に基づいて共同で研究を実施しています。

初年度採択した研究課題

事業化促進研究①

次世代電磁環境適合性(EMC)試験に適用可能な光伝送システムの開発

株式会社多摩川電子、青山学院大学

 IoT(モノのインターネット)、ロボット、AI等の技術革新に伴い電子化が急速に進み、第四次産業革命とも言われる状況にあります。これら電気製品の商品化にあたっては、電気的な安全性試験(EMC試験)がメーカーに課されますが、近年の技術革新によりEMC試験のニーズは多様化しています。
 本研究では、青山学院大学が有する電磁波評価に関する研究シーズとKISTECのEMC試験技術を活用して、新しいEMC試験に対応可能な光ファイバーを用いた光伝送システムの事業化に(株)多摩川電子が取り組んでいます。初年度は、電波吸収体・電磁波シールド材、アンテナ、EMIなどの測定システムを構築し、光伝送システムの有効性を確認しました。


光伝送システムによる電波吸収体の特性評価

事業化促進研究②

微粒子投射処理(WPC処理)を用いた、超硬合金金型の高機能化

株式会社不二WPC、国産合金株式会社

 金型技術は、同一形状の製品を安く大量生産することを可能とし、高度経済成長期から日本のものづくりを支えてきました。寸法精度が求められる精密金型には、変形しにくく耐摩耗性が高い超硬材料が用いられていますが、靭性に劣る(もろい)という欠点があります。 本研究では、微粒子投射処理による表面改質について先進的な技術を有する(株)不二WPCの技術シーズとKISTECの焼結技術及び分析・評価技術を活用して、国産合金(株)が高機能な超硬金型を開発し、2社共同による事業化に取り組んでいます。初年度は、硬質材料の調合と焼結の条件を検討し、さらにアルミ溶湯における硬質材料の耐食性評価をしました。

アルミ溶湯における硬質材料の耐食性評価 (EDS 分析)

事業化促進研究③

歩行支援杖型ロボットの開発

株式会社タクマ精工、横浜国立大学

 ロボット技術の急速な発展に伴い、コミュニケーションロボットやお掃除ロボット等、我々の日常生活にロボットが活用され始めています。特に神奈川県では、平成25年2月に「さがみロボット産業特区」が国から地域活性化総合特区に指定されたことを受け、生活支援ロボットの実用化と普及に重点的に取り組んでいます。
 本研究では、横浜国立大学が有するロボット技術に関する研究シーズとKISTECの安全性評価技術を活用し、使用者の動きに合わせて移動し体重を支える「歩行支援杖型ロボット」の事業化に(株)タクマ精工が取り組んでいます。初年度は、実証試験に備えた試作機の製作と安全性の評価を実施しました。

杖型ロボット 機能のイメー ジ図

事業化促進研究④

不均一加熱により カーボン・カーボン複合材料(C/C)と 金属材料のろう付を実現する 新規工業炉の開発

東海大学、関東冶金工業株式会社

 航空宇宙関連分野等に利用されている炭素繊維強化炭素複合材料(C/C材料)は、良好な耐熱性、熱伝導性と高い比強度、弾性をあわせ持つ優秀な材料です。この先端材料の用途を拡大するために、金属材料との信頼性の高い接合技術が求められています。
 本研究では、東海大学が有するろう付に関する研究シーズとKISTECのレーザー加工機による堆積技術を活用して、C/C材料と金属材料のろう付のための専用工業炉の事業化に関東冶金工業(株)が取り組んでいます。初年度は、ステンレスおよびめっき処理した銅板へろう材を堆積することが可能であることを明らかにしました。

金属板上に形成したろう材

事業化促進研究⑤

無電解めっき法による 金属微細パターンの形成の高度化

関東学院大学、株式会社アズマ

 IoTの進展などでネットワークの情報通信量は爆発的に増加することが予測されており、情報通信を支える電子部品であるプリント基板分野では、より安価で大量生産が可能な配線パターニング技術が求められています。
 本研究では、関東学院大学が有する環境にやさしいめっきに関する研究シーズとKISTECの表面分析技術を活用して、新規配線パターニング技術(レジストを使用しないダイレクトパターニング)の事業化に(株)アズマが取り組んでいます。初年度は、液晶ポリマー(LCP)上に実用可能なレベルの密着強度(0.6kN/m以上)を持つ無電解銅めっき皮膜パターンを実験室レベルで形成することに成功しました。

めっきパターニ ング処理に用い た フ ォ ト マ ス ク(左)と
形 成したパターン (右)

事業化促進研究⑥

ワーム型ロボットと地中レーダーなどを 統合した点検プラットフォームの創造

株式会社タウ技研、東京工科大学

 ドローンに代表されるように、人の立入が制限される災害現場や立入が困難なインフラ点検現場へロボット技術が活用され始めています。中でもレーダーやセンサー類を遠隔操作や自律動作により点検個所に運搬し、必要な距離に近付くことが可能なロボットの開発が求められています。
 本研究では、東京工科大学が有するワーム型ロボット(蛇行運動によらず推進可能な節を持つロボット)に関する研究シーズとKISTECのアンテナ評価と電磁界シミュレーション技術を活用して、インフラ点検のためのロボットシステムの事業化に(株)タウ技研が取り組んでいます。初年度は、ヘッド部に内蔵するレーダーのシミュレーション結果をもとに試作機を製作しました。

試作機の 外観

事業化促進研究⑦

感光性SAMを用いた ケージド細胞培養基板の実用化と エレクトロニクス材料への展開

神奈川大学、ニイガタ株式会社、国立研究開発法人物質・ 材料研究機構、株式会社ウォーターケム

 平成26年9月に世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われる等、ライフサイエンス分野において再生医療は着実に成果を上げています。このようなバイオ分野における研究の発展を支えるために、研究ツールとして、生体組織を模倣する細胞パターニング・培養技術が求められています。
 本研究では、神奈川大学と(国研)物質・材料研究機構の細胞パターニング・培養に関する研究シーズとKISTECの分析技術を活用して、ニイガタ(株)と(株)ウォーターケムによる事業化に取り組んでいます。初年度は、培養基板に用いる数種の感光性材料を合成し、飛行時間型質量分析装置による定性分析等を行いました。

光応答性基板の光照射部分に形成された細胞パターン(左)と 
光未照射部分への二次照射による細胞の移動(右)

事業化促進研究⑧

ラマン分光を用いた食品中の機能性成分の 迅速定量装置の開発

株式会社分光科学研究所、早稲田大学

 近年、未病の予防の観点から、特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品などといった健康食品に対する需要が増しており、その機能性の科学的根拠を示すため、ビタミンなどの機能性成分の含有量を迅速・簡便に分析できる装置が求められています。
 本研究では、早稲田大学と(株)分光科学研究所が有する「ラマン分光定量分析」の研究シーズをもとに、KISTECを含む3者で技術開発を進め、(株)分光科学研究所による事業化を目指します。
 初年度は、ラマン分光を用いた食品中の機能性成分の迅速定量装置のプロトタイプ試作を進めるとともに、市販の栄養機能食品の機能性成分含有量の迅速分析が可能なこ
とを示しました。

ラマン分析装置 ( 開発中 ) の心臓部