平成30年度産学公連携事業化促進研究の結果概要

平成30年度産学公連携事業化促進研究の結果

研究課題①

次世代電磁環境適合性(EMC)試験に適用可能な光伝送システムの開発

株式会社多摩川電子、青山学院大学、KISTEC電子技術部

 IoT(モノのインターネット)、ロボット、AI等の技術革新に伴い電子化が急速に進み、第四次産業革命とも言われる状況にあります。これら電気製品の商品化にあたっては、電気的な安全性試験(EMC試験など)がメーカーに課されますが、近年の技術革新によりEMC試験のニーズは多様化しています。

本研究では、青山学院大学が有する電磁波評価に関する研究シーズとKISTECのEMC試験技術を活用して、新しいEMC試験に対応可能な光ファイバを用いた光伝送システムの事業化に(株)多摩川電子が取り組んでいます。この光伝送システムは、光ファイバで高周波信号と駆動電力を同時伝送する光ファイバ無線(RoF)技術を採用し、従来の同軸ケーブルを用いた伝送システムと比較して、電気絶縁性と長距離伝送能力が非常に優れているため、外来ノイズに強い計測システムを構築することが可能となります。

 初年度は、電波吸収体・電磁波シールド材、アンテナ、EMI(不要電磁ノイズ)などの測定システムを構築し、光伝送システムの有効性を確認できました。しかし、EMIの測定規格を満たすためには、レシーバヘッドの受信感度とシールド性能が不足しているという課題が明らかとなったため、2年目では受信感度とシールド性能を向上させた光給電RoFレシーバヘッドの製品化を行い、共同で記者発表を行いました。今後、自動運転など高い安全性が求められる自動車分野で活用されるために、狭いエンジンルーム内での電磁ノイズ測定などを考慮して、レシーバヘッドの改良を行う予定です。

開発した光給電RoFレシーバ
(EOC-1022)

 


研究課題②

微粒子投射処理(WPC処理)を用いた、超硬合金金型の高機能化

株式会社不二WPC、国産合金株式会社、KISTEC機械・材料技術部

 寸法精度が求められる精密金型には、変形しにくく耐摩耗性が高い超硬合金が用いられていますが、靭性に劣る(もろい)という欠点があります。

 本研究では、微粒子投射処理(WPC処理)による表面改質について先進的な技術を有する(株)不二WPCの技術シーズとKISTECの焼結技術及び分析・評価技術を活用して、国産合金(株)が高機能な超硬金型を開発し、2社共同による事業化に取り組んでいます。初年度は硬質材料の調合と焼結の条件を検討するとともに、アルミ溶湯における硬質材料の耐食性評価を行いました。2年目は超硬合金の機械的性質の向上をねらいとしてWPC処理を行い、その結果、WPC処理が超硬合金の機械的性質の向上に有効であることを確認できました。また、新硬質材料の開発も継続して行い、最適条件の絞り込みに取り組みました。


WPC処理した超硬合金の機械的性質


研究課題③

歩行支援杖型ロボットの開発

株式会社タクマ精工、横浜国立大学、KISTEC電子技術部

 神奈川県では、「さがみロボット産業特区」において、生活支援ロボットの実用化と普及に重点的に取り組んでいます。

 本研究では、高齢者の自立した生活を支援することを目的として、横浜国立大学が有するロボット技術に関する研究シーズとKISTECの安全性評価技術を活用し、使用者の動きに合わせて移動し体重を支える「歩行支援杖型ロボット」の事業化に(株)タクマ精工が取り組んでいます。初年度は、実証試験に備えた試作機の製作と安全性の評価を実施しました。2年目は、試作機の評価を行い、使用者の上体に加速度センサを取り付け、上体の加速度を計測しました。その結果、杖型ロボットを利用することで上体の揺動が低減できることを確認しました。

歩行支援杖型ロボットの試作機


研究課題④

不均一加熱によりカーボン・カーボン複合材料(C/C)と金属材料のろう付を実現する新規工業炉の開発

東海大学、関東冶金工業株式会社、KISTEC情報・生産技術部

 航空宇宙関連分野等に利用されている炭素繊維強化炭素複合材料(C/C材料)は、良好な耐熱性、熱伝導性と高い比強度、弾性をあわせ持つ優秀な材料です。この先端材料の用途を拡大するために、金属材料との信頼性の高い接合技術が求められています。

 本研究では、KISTECのレーザー加工機を用いて金属材料上にろう材を堆積し、東海大学のろう付技術を活用して、関東冶金工業(株)での専用工業炉の事業化に取り組んでいます。初年度はSUS304上へのろう材堆積条件を明らかにし、2年目は関東冶金工業(株)の実験炉を用いたC/C材料との接合条件の適正化によりSUS304 とC/C材料の接合が可能であることを明らかにしました。

c/c材とステンレス鋼SUS304のろう付部の外観と断面


研究課題⑤

選択的無電解めっき法による金属パターン形成法の高度化

関東学院大学、株式会社アズマ、KISTEC電子技術部

 Society5.0では、身近なあらゆるものがインターネットにつながり、無線を介して莫大なデータがやり取りされます。そして,情報通信を支える電子部品であるプリント基板分野では、高周波信号に対応できる液晶ポリマー(LCP)などに対するパターン形成技術が求められています。

 本研究では、関東学院大学が有する環境にやさしいめっき技術とKISTECの表面分析技術を活用して、LCPに直接金属パターンを形成する技術の事業化に(株)アズマが取り組み、初年度に実用に耐えうる密着性を有する無電解銅めっきパターンをLCP上に形成できました。2年目では、実用化を考慮し処理時間短縮を目指しました。その結果、前年度の4倍の速度(30分で2µm以上)での選択的めっき成長を可能としました。


試作した無電解銅めっきパターン


研究課題⑥

ワーム型ロボットと地中レーダーなどを統合した点検プラットフォームの創造

株式会社タウ技研、東京工科大学、KISTEC電子技術部

 近年、人の立入が制限される災害現場や立入が困難なインフラ点検現場へのロボット技術の適用が進んでいます。それらの代表的な機器としてドローンが挙げられますが、ドローンによる画像探査等では不十分なケースも出ています。

 本研究では、より近接した点検を実施するため、東京工科大学の外部推進式ワームロボット技術と(株)タウ技研のレーダー等によるセンシング技術を統合した研究を実施し、KISTECによる支援を受けながら、(株)タウ技研による事業化が進められています。初年度は、センサヘッド部の開発とワームロボットの小型化に取り組み、試作機を完成させました。2年目は、各関節の統合駆動ソフトのブラッシュアップ、レーダーセンシングに対応できるトリガシステムの構築により、レーダーによる試験探査チャート出力を実現しました。


試作機による実験風景と結果


研究課題⑦

感光性SAMを用いたケージド細胞培養基板の実用化とエレクトロニクス材料への展開

神奈川大学、ニイガタ株式会社、国立研究開発法人物質・材料研究機構、株式会社ウォーターケム

KISTEC化学技術部

 平成26年9月に世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われる等、再生医療に関する研究は着実に成果を上げています。このようなライフサイエンス分野の発展を支える研究ツールとして、生体組織を模倣する細胞パターニング・培養技術が求められています。

 本研究では、神奈川大学と(国研)物質・材料研究機構の細胞パターニング・培養に関する研究シーズとKISTECの分析技術を活用して、ニイガタ(株)と(株)ウォーターケムによる事業化に取り組んでいます。2年目は、初年度に合成した数種の感光性材料から感光性SAMを調製、基板上に塗布して感光性膜を形成し、飛行時間型質量分析装置による分析、細胞培養基板としての機能評価等を行いました。


開発した細胞培養基板の
試作品容器と断面模式図


研究課題⑧

ラマン分光を用いた食品中の機能性成分の迅速定量装置の開発

株式会社分光科学研究所、東京大学、KISTEC化学技術部

 近年の平均寿命の伸びに伴い、特定保健用食品(トクホ)に代表される健康食品の市場規模が増大しており、食品製造業界向けに、食品中の機能性成分の迅速分析装置に対する需要が見込めます。

 本研究では、(株)分光科学研究所が有する「ラマン分光定量分析」技術と、東京大学が有するガルバノ分光イメージングに関する技術シーズを組み合わせ、KISTECを含む3者で技術開発を進め、(株)分光科学研究所による事業化を目指します。2年目は、初年度に試作した「食品中の機能性成分のラマン分光・迅速定量装置」のプロトタイプにガルバノ・スキャン機能を追加し、市販の栄養機能食品の迅速分析に必要とされる広領域平均化測定が可能なことを示しました。


開発した迅速定量装置


研究課題⑨

メカニカル速度リミットロック装置の開発

ダブル技研株式会社、東海大学、KISTEC情報・生産技術部

 今後、人と同一の空間で働くロボットの本格的な実用化が求められています。また、産業用ロボットでも、ティーチングや点検時の接触事故は多発しており対策が求められています。これまで以上にロボットの安全性を向上させるには、ロボットの制御用コンピュータやセンサ等の電子機器が故障したとしても安全性を確保できる安全装置が必要です。

 本研究では、東海大学がこれまで開発してきたメカニカル速度リミットロック装置とKISTECの高速度撮影等の評価技術を活用して、ダブル技研(株)が本装置の事業化に取り組んでいます。初年度は本装置の商品化に向け,その適用範囲を拡大するために衝撃吸収機構を追加し試作を行ないました。さらに、本装置を搭載した車輪移動型ロボットの設計・試作を行ない、本装置の有効性を確認しました。


メカニカル速度リミットロック装置


研究課題⑩

牛の人工受精受胎率の向上を目指した運動良好精子選別と凍結工程のシステム化開発

株式会社協同インターナショナル、横浜国立大学、KISTEC電子技術部

 海外で日本産の農林水産物と食品の人気が高まっていることを追い風に、牛肉や果物などの輸出が好調であったことから、2018年上期の農林水産物と食品の輸出額が過去最高となり、上期として6年連続で過去最高となっています。それに伴い、牛肉の生産に不可欠な和牛の子牛の増産が求められている一方で、繁殖農家の減少や和牛の受胎率の低下などにより、和牛の子牛の増産は難しい状態となっています。

 本研究では、横浜国立大学が保有する解析・評価技術とKISTECが保有する微細加工技術を活用して、(株)協同インターナショナルが和牛の子牛の増産技術に関するシステム化に取り組んでいます。初年度はシステムの基本構成を検討し、部品となるデバイスの試作を行いました。


牛精子の観察例


研究課題⑪

超高真空製膜装置用脱着式ポータブル走査型電気化学セル顕微鏡の開発

バキュームプロダクツ株式会社、神奈川大学、金沢大学、KISTEC川崎技術支援部

 リチウムイオン電池材料やペロブスカイト材料は大気中では急激に劣化する為、作製直後の真空もしくは不活性ガス中での評価・観察が必要となります。

 本研究では、ナノ領域における電流・電位計測、局所的な充放電マッピング等の評価を可能にする金沢大学の走査型電気化学セル顕微鏡(SECCM)に関するシーズ技術及び神奈川大学のコンビナトリアル試料作製に関するシーズ技術、並びにKISTECのデバイス特性計測・評価技術を活用し、バキュームプロダクツ(株)が試料作製から評価まで一貫して高速で処理できる装置を開発しています。初年度は、コンビナトリアル製膜システムに脱着可能でかつ可搬な小型の真空チャンバーに組み込まれたSECCMを設計・製作しました。また、真空中でのSECCM測定を可能にするため、新規プローブ機構の開発検討を推進しています。


金沢大学高橋研究室が製作したSECCM