平成29年度開始プロジェクト

「革新的高信頼性セラミックス創製」プロジェクト概要

研究の背景

我が国のエネルギー政策の転換に向けた技術やシステムの向上は喫緊の課題となっており、自動車や太陽電池等といった環境・エネルギー分野に資する領域に適用するため、その基盤となる革新的な高信頼性材料の開発が求められています。

 先ず、照明のLED化は、神奈川県地球温暖化対策計画(201610月改訂)にあるように、低炭素社会実現のために有効な手段であることは言うまでもありません。また、20165月に閣議決定された地球温暖化対策計画においても、LED等の高効率照明を2030年までにストックで100%普及することを目指すこととなっています。現在、白熱電球や蛍光灯の代替としてLED照明が普及しつつありますが、高出力LED照明は普及が十分に進んでいるとは言えません。現在の最も典型的なLED照明では、UV、紫色あるいは青色LEDを励起光源として、これに樹脂に分散させたサイアロン蛍光体からの赤や緑、黄色の発光を併せて白色を実現しています。LED照明においては、励起光源から発生した熱や光に起因した樹脂の劣化により光束減少が生じて寿命となるという技術課題があります。特に、高天井用照明や屋外インフラ用照明、スタジアムなどの投光器、大型プロジェクターなどの高出力LED照明の発熱量は大きく樹脂の劣化は顕著であり、蛍光体関連部材の耐久性の欠如が高出力LED照明の社会実装のボトルネックとなっています。

 次に、パワー半導体は、低炭素社会を実現するためのキーとなる電力変換素子として、家電などからHVEVやパワートレインなどの車両、さらには再生可能エネルギーを利用したスマートグリッドのためのインフラまで多岐にわたり応用が期待されています。特に、自動車関連のパワーデバイスはCO2削減効果とともに市場も大きい分野です。パワーチップについては多数の企業、大学、研究機関などにおいて研究開発が活発になされていますが、周辺技術である樹脂や絶縁セラミックスといった高熱伝導材料の開発は進展していないのが現状であります。

 

本プロジェクトのねらい

本プロジェクトでは、前述の技術課題を解決すべく、高効率高出力LED照明や高熱伝導絶縁基板等の最終製品、新規評価法(デファクトスタンダード)の確立といった出口を見据え、戦略的研究シーズ育成事業で得られた研究成果をベースに、高機能・高信頼性を共発現する革新的なセラミックス材料の開発し、社会実装を目指した応用展開を図るほか、セラミックス材料をはじめとした機械的信頼性の向上に資する新規の機械的特性評価法の開発を目指します。

○透明蛍光サイアロンセラミックスバルク体の開発、及び高効率高出力LED照明への応用展開

○高熱伝導性配向材料の開発、及び自動車やスマートグリッド2等で利用される大電流電力変換用パワーモジュールへの応用展開

○セラミックスをはじめとした材料の機械的信頼性の向上に資する新規の機械的特性評価法の開発、及び広範な機能材料の高信頼性化への応用展開

期待される効果と地域への貢献

神奈川県では、神奈川県環境基本計画において『持続可能な社会の形成』を一つの柱に、地球温暖化対策などを進めています。本プロジェクトで得られる研究成果は、CO2排出量削減に有効な高出力LED照明や、分散型エネルギーシステムの高効率利用に欠かせないパワーエレクトロニクスの実用化に資するものであり、神奈川県の将来のあるべき姿の実現に大きく貢献することができます。神奈川県内には世界一あるいはそれに匹敵するセラミックス関連技術を有する企業は多数存在しています(製品例:各種機能性ガラス、軸受用セラミックスボール、放熱基板、耐熱部材、蛍光体、燃料電池等)。この他にも、原料製造、造粒、成形、焼成、加工を行っている、あるいは、それらを実現するための装置を製造している企業、さらには、環境・エネルギー、自動車、家電などをはじめとしたセラミックスのユーザーが神奈川内で多数活動してします。

本プロジェクトの研究成果は、有効な知的財産の形成と新技術の創製による革新的高信頼性エコマテリアル開発を通じて産業の基盤技術を支え、これらの企業を世界でナンバーワン、オンリーワンに引き上げることで、神奈川県内の産業の活性化に貢献できるほか、神奈川県が推進するヘルスケアやロボット産業とリンクすることで新たな産業の創出にも寄与することが期待できるものと考えています。

プロジェクトリーダー 

              横浜国立大学大学院 環境情報研究院 教授 多々見 純一

研究期間

             平成29年4月から平成33年3月まで(予定) 4年間

「腸内細菌叢(そう)」プロジェクト概要

研究の背景

今日、糖尿病は地球規模での健康に対する大きな脅威と認識されています。糖尿病罹患者は2015年には世界人口の8.8%、415百万人を占め、糖尿病による死者は5百万人にのぼり、2040年には罹患者は世界人口の10.4%、642百万人へ増大すると予想されています。国内においても糖尿病患者数は増加しており、2012年には糖尿病と糖尿病予備群の合計が2,050万人と国民の5人に1人が該当すると報告されています。また、糖尿病に関わる医療費は12,196億円にのぼります。さらに、糖尿病性腎症による透析、糖尿病網膜症による失明など、糖尿病は極めて重篤な合併症を発症する患者も多く、医療費の増大のみならず、健康寿命の短縮、労働力逸失による経済的損失など、社会へ及ぼす影響は極めて大きくなっています。

近年、腸内細菌に関する研究が盛んに行われるようになり、各種疾患との関連が明らかとなってきています。腸内細菌と糖尿病をはじめとする生活習慣病においても、腸内細菌の重要性が指摘されてきており、糖尿病をはじめとする生活習慣病により変化する腸内細菌叢を捉えることができれば、腸内細菌叢による生活習慣病の予防、診断、治療の開発につながると考えられます。

 

本プロジェクトのねらい

本プロジェクトでは、検診受診者の協力者から得られた解析データ(腸内細菌叢、食習慣、代謝機能、遺伝子多型等)のデータベースを構築し、当該データの横断的な解析から腸内細菌叢の変化に伴う生活習慣病等の発症メカニズムを解明する。そして、これらの解析結果を基に糖尿病の未病マーカー探索、機能性食品の開発、腸内環境制御技術の開発などを展開し、腸内細菌叢による生活習慣病の予防、診断、治療を実現します。

期待される効果と地域への貢献

産業界では、腸内細菌叢に基づく研究成果を重要シーズと捉えており、従来進められてきた食品分野だけでなく、創薬や受託解析・検査事業など、腸内細菌叢を活用したビジネスは広がりつつあります。本プロジェクトで得られる成果は、糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防、診断、治療法は、これまでにない新たな手法として利用され、新たな市場の創出、医療費の抑制、県民のQOL向上につながると期待されます。

プロジェクトリーダー 

              理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ 

グループディレクター 大野 博司 

研究期間

             平成29年4月から平成33年3月まで(予定) 4年間