平成23年度研究概要

インフルエンザウイルスの創薬研究

インフルエンザウイルスの変異に影響されないインフルエンザ薬の開発を目指します。

横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科
教授・朴 三用

 現在、新型インフルエンザの大流行が懸念されていますが、インフルエンザウイルスは変異を起こしやすいため、次に大流行するインフルエンザに対し、現在の薬剤が有効であるかは不透明です。しかし、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼというタンパク質は、ウイルスが増殖して生存するのに不可欠で、ほとんど変異を起こさない部位です。このタンパク質の機能を阻害する薬剤ができれば、ウイルスの変異に影響されない治療薬となります。

 本研究では、RNAポリメラーゼ複合体の詳細な立体構造を基に、これらの作用を阻害する化合物の開発を通して、変異に影響されないインフルエンザに対する創薬開発を目指します。

 

「病態モデル細胞」創成と解析システム開発

病気に近い状態のモデル細胞を構築し、薬候補物質の効果・毒性等を調べられる手法の開発をおこないます。

東京大学大学院 総合文化研究科
教授・村田 昌之

 新薬開発では、候補となる化合物の効果や毒性などを、細胞を用いて解析・評価する試験(細胞アッセイ)がおこなわれます。多くの候補化合物を調べる中で、細胞アッセイは非常に重要ですが、従来は正常な細胞を用いておこなっているため、実際に病気になっている際の細胞の状態とは異なった環境下で候補化合物を調べていることになります。

 本研究では、細胞内のタンパク質等を調べられる細胞に病気組織等から採取した病態細胞の細胞質を導入することで「病態モデル細胞」を作成します。この細胞を用いて細胞アッセイをおこなうことで、より病態に近い環境下での各種細胞アッセイを可能にし、創薬開発に拍車がかかります。

 

高効率エネルギー変換型燃料電池の創生

新たなエネルギー生成技術として、非常に効率の高い燃料電池の開発をおこないます。

東京工業大学 資源化学研究所
教授・山口 猛央

 エネルギー技術は、現在、非常に注目されています。その中で、固体高分子形燃料電池は、常温から100℃で運転できる小型で軽量な発電デバイスで、家庭などで、必要な時に必要な量だけ発電可能です。しかし、現在の固体高分子形燃料電池の開発は、低価格化などに向いてしまい、本来の特徴である小型軽量で高い変換効率の実現に向けた研究があまり行われていません。

 本研究では、無加湿でも機能するナノ構造で制御した電解質膜と、高電位においても表面酸化されにくい白金複合体触媒を組み合わせることで、高効率な固体高分子型燃料電池の実現を目指します。

 

不揮発性メモリ素子/CMOS融合技術による低消費電力CMOSロジックシステム技術の創成

IT機器における消費電力を大幅に削減する新しい集積回路技術の開発を行います。

東京工業大学 像情報工学研究所
准教授・菅原 聡

 近年、IT機器による消費電力量は急激に増大し、今後、IT機器の省エネ化はこれまで以上に重要になってくると考えられます。特に最近のパソコン、サーバおよびスマートフォンのような携帯機器などでは、待機時の消費電力が非常に大きくなり重要な問題となっていますが、この待機時の消費電力は、従来の集積回路技術の延長では大きく削減することは難しいと考えられています。

 本研究では、従来のCMOSロジックでは用いられてこなかった不揮発性メモリ素子とCMOSロジックとの融合によって初めて実現できる不揮発性パワーゲーティングに関する集積回路技術を確立し、既存のシステムに適合し,待機時の消費電力を大幅に削減できる技術の開発を行います。