平成27年度研究概要

機能性ハプティックアクチュエータの創製

次世代医療・福祉ロボットの実現に向けて、力触覚技術※1を応用した革新的アクチュエータ※2を開発します

横浜国立大学大学院 工学研究院
准教授・下野誠通

 超高齢社会が加速する我が国では、QOL 向上に直接寄与する手術支援ロボット※3やリハビリテーションロボット※4など、国産の医療福祉ロボットの開発と実用化が望まれています。しかし、既存の医療福祉ロボットは本質的には工作機械や産業ロボットの延長に留まっており、人体を含む対象との柔らかい接触動作を実現することが困難であるため、適用可能な範囲が限定されています。本研究では、手術やリハビリテーションにおいて望まれる柔らかい運動を可能にする、力触覚技術を応用した様々なアクチュエータを開発します。また、他の研究機関や医療機関と連携して医療福祉ロボットの試作や臨床試験に臨み、将来的には国際競争力を有する神奈川発の次世代医療福祉ロボットの実現を目指します。

  • ※1 力触覚技術:視覚、聴覚に続く新しい感覚技術。対象に力を伝えるとともに対象からの力を感じ取る(力覚を双方向に伝送させる)ことができる。
  • ※2 アクチュエータ:入力されたエネルギーを機械・電気回路等により様々な運動(直線、回転など)に変換する駆動装置。
  • ※3 手術支援ロボット:遠隔操作による低侵襲で精密な手術を可能にするロボット。
  • ※4 リハビリテーションロボット:障害を持つ人のリハビリテーションを支援するロボット。

 

高機能・高信頼性共発現エコマテリアル※5の創製

高信頼性マテリアルデザインを確立し、高度ものづくりサイエンスを実現します。

横浜国立大学大学院 環境情報研究院
教授・多々見純一

 我が国のエネルギー政策の転換に向けた技術やシステムの向上は喫緊の課題ですが、これを支えるのはその基板となる革新的な材料であるといっても過言ではありません。本研究では、高機能・高信頼性を共発現する材料の創製を目指し、局所領域破壊特性※6のナノ・ミクロスケール計測技術および破壊シミュレーションを元に新規な材料設計手法を確立します。併せて、LEDや絶縁基板等の最終製品を意識した革新的材料の開発を行います。

  • ※5 エコマテリアル:優れた 特性・機能を持ちながら、環境や人間への負荷がより少ない材料。
  • ※6 局所領域破壊特性:材料の局所領域の破壊靭性や強度。本テーマでは提案者らが考案した、ほぼ全ての材料の破壊特性評価に適用可能な評価法を用いる。

 

革新的巨大負熱膨張物質の創成

加工性と機械的特性に優れた、新世代の巨大負熱膨張材料の実用化を目指します。

東京工業大学 応用セラミックス研究所
教授・東正樹

 電子機器や光学機器等、複数の素材を組み合せるデバイスでは、熱膨張による位置ずれが問題になる他、各素材の熱膨張系数※7の違いが界面剥離※8や断線といった深刻な障害に繋がるため、多くの産業分野において熱膨張制御への強い要請があります。これに対し、これまでに熱膨張抑制を目的として様々な負熱膨張材料(温度が上がると縮む材料)の研究・開発が進められています。本研究では、新たなメカニズム(サイト間電荷移動)により従来の3倍近い負の熱膨張率を持つ第三世代負熱膨張材料※9を軸に、温度履歴※10を持たず広い温度範囲で巨大負熱膨張を実現する革新的な負熱膨張物質を開発します。また、産業化・実用化を目指して、従来の半分程度の圧力下での材料合成法や、負熱膨張物質の薄膜育成等にも取り組みます。

  • ※7 熱膨張系数:温度変化に対して物質が膨張する割合。一般に、樹脂は金属やセラミックス等に比べて熱膨張系数が大きい。
  • ※8 界面剥離:素材同士が接合面から剥がれること。
  • ※9 第三世代負熱膨張材料:結晶構造や磁気体積効果に起因する従来の負熱膨張材料に対し、東教授が発見したサイト間電荷移動メカニズムにより高い負熱膨張効果を持つ材料を第三世代と呼ぶ。
  • ※10 温度履歴:昇温過程と降温過程で物質の状態に違いが出ること。