平成29年度研究概要

「貼るだけ人工膵臓」の開発

患者のQOL向上に寄与する丈夫で廉価な『貼るだけ人工膵臓』の開発・実用化を目指します。

東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
准教授 松元 亮

 糖尿病治療およびその合併症の予防には厳格な血糖管理が必須ですが、患者の生活の質を損なわず、安全かつ長期的に有効な治療法は未だ確立されていません。本研究では、スマートゲル1を応用した自律型のインスリン2供給機構とマイクロニードル等の低侵襲皮下導入技術を融合した「貼るだけ人工膵臓」を開発します。機械に頼らず、痛みなく、安く、使い捨て可能な技術で、糖尿病におけるアンメットメディカルニーズ3、すなわち、長期的な血糖管理、低血糖の回避、患者負担の軽減、の解決を目指します。

  • ※1 スマートゲル:外部刺激に応答して物理化学的性質を変化させる高分子ゲル。
  • ※2 インスリン:膵臓から分泌され、血糖を抑制する作用のあるホルモン。
  • ※3 アンメットメディカルニーズ:強く望まれながらも満たされていない医療上のニーズ。

 

有機超弾性材料の導出

汎用性の高い有機超弾性材料の導出を目指します。

横浜市立大学大学院 ナノシステム科学研究科
教授 高見澤 聡

 “超弾性”とは、塑性変態した固体が自発的に構造回復する特性で、これまで超弾性合金4・形状記憶合金5など特殊な合金でのみ見られる特異な物理特性として極めて限定的に発展してきました。研究代表者は、2014年に世界で初めて単純な低分子有機化合物結晶が超弾性現象を発現するのを見出しており、本研究では、低分子有機物における超弾性研究を深化させて基礎的な知見の基盤を構築し、実用性の高い有機超弾性材料の導出を目指します。

  • ※4 超弾性合金:外部からの力で変形しても、その力を取り除くと元の形状に戻る性質を持つ金属。

  • ※5 形状記憶合金:変形後にある一定の温度以上に加熱すると元の形状に戻る性質を持つ金属。

     

革新的環境調和機能性材料の創出

独自の物質設計指針で環境に優しい機能性材料を開発します。

東京工業大学 フロンティア材料研究所
教授 東 正樹

 全てのモノがインターネットにつながるIoT※6社会の実現に向けて、電子デバイスの消費電力の低減や、環境負荷の小さい材料の開発が求められています。精密構造解析と電子状態解析に基づく物質設計で、低消費電力不揮発性メモリ材料につながる強磁性強誘電体※7や、風や振動から電気エネルギーを生む圧電発電のための非鉛圧電体※8、外気温の変化から生じる熱歪みを吸収する負熱膨張材料※9などの、革新的な環境調和機能性材料を開発します。

  • ※6 IoT:Internet of Thingsの略。あらゆる物をインターネットにつなげるため、外部から電源を供給されないセンサーなどの屋外設置が爆発的に増える。
  • ※7 強磁性強誘電体:磁石の性質(強磁性)とコンデンサーの性質(強誘電性)を併せ持つ材料。両者の相関を用いることで、低消費電力のメモリを実現できる。
  • ※8 非鉛圧電体:環境に有害な鉛を含まない圧電体。運動と電気信号を変換する。
  • ※9 負熱膨張材料:温めると縮む材料。熱膨張による位置決めのずれを補正できる。