平成31年度研究概要

新産業創出に向けた無標識AIセルソーター

スマートセルの効 的作製法の確立を目指します。

東京大学大学院 理学系研究科 
教授 合田圭介

 細胞を自由自在に改変し産業利用する「スマートセル産業」の時代が幕開けつつあります。スマートセル作製の手法として、ランダム変異を利用した有用形質のスクリーニング(指向進化)が用いられていますが、スクリーニングの指標とする形質が限られてしまうという限界がありました。本研究では、研究代表者らがこれまでに開発してきた生きた細胞内の分子を高速・無標識で解析する光計測技術にマイクロ流体技術と人工知能を融合することで、特定の分子を多く含有するスマートセルを高効率に分取する無標識AI セルソーターを開発します。それにより、指向進化の適用範囲を拡大し、燃料や医薬品など種々の分子を高効率に生産するスマートセル作製法を確立する事を目指します。 新産業創出に向けた無標識AIセルソーター

脳梗塞治療のためのスキャフォールド材料

人工細胞足場※1を創製し、脳梗塞の再生医療技術を開発します。

東京医科歯科大学  脳統合機能研究センター
准教授 味岡逸樹

 脳の血管が詰まってニューロン※2 が脱落する病気、脳梗塞で生じる手足の麻痺は、運動機能の司令塔であるニューロンが自然治癒力で再生修復しないため、ほとんど治りません。しかしながら、最近の脳研究の発展により、損傷した脳が再生能力を秘めていることが明らかとなってきました。これまで研究代表者らは、損傷した脳の潜在的再生能力を発揮させる人工細胞足場を開発してきました。本研究では、ヒトへの医療応用を実現するために生体適合性が高く、低侵襲性の人工細胞足場を創製し、脳梗塞モデル動物で生じる手足の麻痺の治癒効果を発揮させることを目指します。

 

  • ※1 人工細胞足場: 生体内の細胞は足場となる生体構造と三次元的に接しており、その生体構造を人工的に模倣した材料。

  • ※2  ニューロン:脳を構成する最も重要な細胞の1つで神経細胞と呼ばれる。入力刺激を受け取り、活動電位を発生させ、接続するニューロンに情報を伝達する細胞。

脳梗塞治療のためのスキャフォールド材料


セキュア量子基盤技術の研究

量子技術に基づく次世代情報通信技術を開発します。

横浜国立大学大学院 工学研究院
准教授 堀切智之

 光と物質の量子技術開発によって、長距離量子通信などにつながる量子デバイス・システム実装を目指します。量子通信によって、インターネットを含む古典通信だけではなく、量子コンピュータ※3 をクラウド化する際の量子状態伝送における安全性も確保できます。本研究では光ファイバー中を送られる光量子状態を物質量子状態へ転送・制御・保存する量子技術を研究開発し、量子コンピュータ・メモリーなど遠隔量子デバイスとの結合技術へとつなげます。これにより従来の古典通信では達成できないセキュリティや計算機に関する基盤技術の実装を目指します。

 

  • ※3 量子コンピュータ:従来のコンピュータと異なる量子状態の重ね合わせを利用した計算機。
 セキュア量子基盤技術の研究